竜虎(タイガー&ドラゴン)

公開日: : 最終更新日:2022/05/10 したまち爆笑コラム

image37[1]とあるうららかな五月の昼下がり。
私は駅前通りから少し入ったカレー専門店のドアをくぐった。「カランコロン」とドアベルの音。
カウンターだけの5~6人も入れば満員になってしまうこじんまりとした薄暗い店内。
本格的な香辛料の香りと何故か70年代のゴリゴリなアメリカンロック。
すると店の奥から「いらっしゃいませ」
以前この店に来た時には見なかったバンダナを頭に巻いた若者が、私の前に水の入ったグラスを置いてくれた。

そうなのだ。
以前初めてこの店に来た時、年の頃なら60代半ば、どうやら店主らしいくわえタバコのオババに私は言ったのだ。

私:「チキンカレーを通常より辛くしてもらえる?」ギロリと私を見返すオババ。
オババ:「チキンカレーはうちで一番辛いんだけど、だ~いじょ~ぶぅ?」
ニヤリと曲がる口元。鼻からタバコの煙。
この勝負(?)負けるわけにはいかない!と私。
ガキッ!とぶつかり火花が散る視線…。

だが私が甘かった。
やがて目の前に置かれた「オババ特製激辛チキンカレー」は私の想像を超えた辛さだったのだ。
オババが投入したカレーの辛味成分ガラムマサラが、一口毎に私の汗とともに体力を奪っていったのだった。
皿の端に無残にも食べきれなかったカレーの残骸。
私:「はぁ、はぁ、はぁ…。ご、ごひそうひゃまれしたぁぁぁ…。」
打ちひしがれる私と、勝ち誇るオババ。

あれから数ヶ月。
一人辛さに対するトレーニングーをつんできた私。
そして今日。バンダナのにーちゃんに
私:「お手間かけて申し訳ないんだけど、チキンカレーのすんごい辛いのを作ってもらえますか」

その瞬間私は感じたのだ。
暗くて見えない厨房の奥から発せられるあのオババの殺気を。
そして待つこと数分。
オババ入魂の「特製激辛チキンカレー」と対峙する私。
そしてライスとルーを一口。口中に炸裂する香辛料の嵐に耐える私。
喉を通過し、食道を通過し、胃に着弾!焼けるような痛みにも似た感覚….。
だがしかしオレはもうあの頃のオレではない。
「…食える」「この程度の辛さなら十分食えるっ!」見事完食出来た私は、
少し声を張って、少し顔を厨房に向けて言ったのだ。

私:「いやぁ、美味しかった。ご馳走様」
勘定を済ませて外へ出ると、爽やかな五月の風が私の顔を撫でていったのだった。

口の周りがちょっとヒリヒリとした。

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